会場を見渡すとステージ前に何やら大きな白い布が張られています。彼らのステージで使用される何かの仕掛けでしょうか...とは言っても当時は仕掛けがあるステージなんてあまりありませんでしたから、実際その場ではそうは思わなかったでしょうけど。何だろうなぁ〜と思っていると、何のことはない前座のバンドの代わりにやったフィルム上映用のスクリーンでした。

　前座フィルムが終わり、スクリーンも片付け終わったところで Uriah Heep の登場です。オープニングは最新アルバム『魔の饗宴』から「サンライズ」。イントロのオルガン部分に Uriah Heep の紹介アナウンスが被さります。メンバーは何やら派手な衣装を着ていました。特にボーカルのデビッド・バイロンは真っ赤な上下お揃いの服でチョット唖然...。グラム・ロックの影響なのか、普段着に近いもの(ジーンズ系)からステージ衣裳っぽいものに変わっていく傾向があったのではないでしょうか。もちろんこれはバンドのカラーや人に依りますけども。

　続いて同じアルバムから「スイート・ロレイン」、以降『対自核』『悪魔と魔法使い』からの曲を中心に演奏されました。特に印象に残っているのは「7月の朝」でしょうか。この曲は名曲ですよね。あと初期のナンバーではファースト・アルバムより「ジプシー」が演奏されました。この曲ではケン・ヘンズレー奏でるところのキーボード・ソロが延々とあったのですが、これがPAのバランスが悪くもうグシャグシャ。特にシンセサイザー(Mini Moog だったのかなぁ〜)の音がキンキンして耳をつんざくようで、ものすごく不快でした。

　さて最後の曲は大ヒット曲「対自核」です。観客も大ノリです。アンコールは「魔の饗宴」の一部と『対自核』からの「ラブ・マシーン」、そして「ロックンロール・メドレー」で終わり。このメドレーには「ロール・オーバー・ベートーベン」や「ブルー・スエード・シューズ」等があったと思います。

　全体としてキッチリとまとまったハード・ロック・ショウといった印象を受けました。演奏曲目はこの後に発売されたライブ・アルバムとほぼ同じです。また、良かったのがベースのゲーリー・セインでしょうか。がに股っぽく足を開いて高めに持ったベースで...前へ出てきて観客にアピールしていた姿が印象的でした。あとどの曲だったか忘れましたが、ギターのミック・ボックスがモニター・スピーカーの上にひっくり返って舌をべェーと出していたのを何故か憶えています。

***よもやま話 いろいろ***
[チケットのお話]
　前売り初日に速攻で買いにいったわけではないので、南側の２階の中段あたりだったと思います。これまでの武道館コンサートの席種はS/A/B/Cの4グレードだったと思いますが、この時は3グレードだったと記憶しています。現在は2グレードぐらいしかないですよね。それも殆どがS席だったりして、「ここがS席だったらA席はどこかいな」と思うこともしばしばです。
　またチケットにも書かれていますが、"ボーナス・シート・シリーズ"ということでペア席が用意されていました。これはキョードー東京のペア席"ラブ・シート"に対抗して、というよりも真似をして、ユニバーサルがこの"ボーナス・シート"を始めたものです。

[映画のお話]
　前座代わりに上映されたフィルムは Jeff Beck のものでした。同じユニバーサルのプロモートで5月に来日公演を行う Beck,Bogert & Appice の宣伝というわけです。ただし実際に上映されたのは BB&A ではなく第2期 Jeff Beck Group のもので、曲は有名なの「ゴーイング・ダウン」でした。
それにしても当日「上手いことを考えたな」って思いました。スクリーンの設置・片付けというのはあるけれど、前座バンドの楽器のセッティングより楽そうだし、だいいちギャラが要りませんよね。

[メンバーのお話]
　来日した時のメンバーは David Byron(vo) / Mick Box(g) / Gary Thain(b) / Ken Hensley(kb) / Lee Kerslake(ds)でした。メンバーチェンジの激しい Uria Heep でも比較的安定していて、絶頂期だった時代ではないでしょうか。ちなみに既に2人が故人になっています。メンバー構成で分けると結成以来全部で12期以上もあるそうですが、来日メンバーは第6期になるそうです。ちなみにファースト・アルバム時の第2期メンバーには、後にエルトン・ジョンのバックとして来日することにもなるナイジェル・オルソン(ds)がいました。

[葉っぱのお話]
　私たちの座っていた席の隣に外人のグループが陣取っていました。開演前に変な匂いがするなと思っていたら、いけない葉っぱの回し飲みをやっていたのです。声をかければこっちにも回してくれそうな雰囲気ではありました。しかしながら当時二十歳前の私はタバコもまだで、目を回しても困るので遠慮したのでした。せっかくのチャンスだったんですけどね。(現在はヘビー・スモーカーのヒリュウでした)

[撮影のお話]
　当日、1〜2曲の間ステージ前にムービーカメラが入って、ライブを撮っていました。テレビとかでそれを観たことは無いのですが、あのフィルムは何処へいってしまったのでしょうか。

[７月の朝のお話]
　名曲「7月の朝」は『対自核』のアナログ盤ではA面のラスト曲なんですけれど、昔はA面ラストやB面トップの曲にもそれなりの曲を配置してましたよね。ツェッペリンの「天国への階段」もA面ラストですし。そういう意味においてもCDってつまらないですね。

[PA のお話]
　この日は PA が悪かったという話をよく聞きました。当時だけではなく今もタマに耳にすることがあります。なんかこの話だけが一人歩きしているようにも思えます。確かに前述したようにキーボード・ソロなんてひどいものではあったんですけれど。ただ当時(もしかしたら現在も) PA の悪さと結びつけられた評価があまりにも多かったことは、何か本質から外れているような気がします。
　来日して人気を落としたバンドって、その昔にモンキーズなんていうのがありましたけど、Uriah Heep の場合むろん PA の所為なんかではなく、ロックン・ロール・メドレーとかやってしまうような、コーラスが綺麗な普通のハード・ロック・バンドだったということではないでしょうか。後述する YES と比較されてしまったのも可哀想と言えば可哀想ですが。でも私は好きでしたけどね。

[有名人のお話]
　武道館の外でサイン攻めにあっているスペースバンド時代のつのだひろを見かけました。スペースバンドのステージ衣裳だった海賊の服みたいのを着ていたのにはビックリ。成毛滋との"フライド・エッグ"はけっこう "Uriah Heep" に影響を受けていましたからね。アルバム「ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン」の中の何曲か聞くと良く判ります。ちなみに成毛滋も武道館に来ていたらしいです。

[ステッカーのお話]
　来日コンサートの宣材のひとつとしてステッカーがありました。アルバム『魔の饗宴』のジャケットをアレンジしたものでした。私的なことですが、このステッカーは、Uriah Heepのコンサートに一緒に行ったMクンと渋谷のヤマハに行ったときに、エルトン・ジョンの丸いステッカーと一緒に貰ったのでした。しかしながらUriah Heepの方はひとつしかなく、それを私が頂いちゃったわけです。Mクンは非常に残念そうな顔をしていたのを今でも憶えています。
　この二つの丸いステッカーは部屋の本棚のガラス扉にずっと並んで貼られていました。しかしながら93年に我が家を建て直した時に本棚は廃却処分となり、ステッカーもガラス扉と共に捨てられたのでした。右の画像はツアー・パンフの中に写真があったので、それから取り込んだものです。（この項 2004/02/15 記）